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新宿パークタワーラウンジ
小分けのオフィス空間の集合であったエリアを新宿パークタワーで働く勤務者専用の共有ラウンジに改修する計画。ランチやリフレッシュのためのスペースを充足すると共に,コミュニケーションの活性化や勤務者のモチベーションの向上など,オフィスビルにおけるこれからの付加価値を生み出すモデルタイプを目指すことに加え,セミナーや懇親会,災害時の一時待機の場所となることも求められた。 集まる人数,滞在時間,過ごし方も不確定かつ多種多様なので,人と人を分ける「垂直なパーティション」ではなく,分節しながら緩やかに繋ぐこともできる「水平なパーティション」を提案した。視線ではなく,距離によって分節する「水平なパーティション」は,実際にその場を過ごす人によって発見的に使い方を捉えられる大きな水平面であり,お花見のレジャーシートのように,ひとりで低密に使うことも,5人や10人で集まって高密に使うこともできる流動的な余地をはらんだ場である。 4種類の高さを混在させ,状況によって180~220席程度となる場を用意した。
丘端の家
3方向接道した敷地に、夫婦+子ども2人の4人家族のための家を建てる計画。子どもの成長や、時間が不規則な夫婦の仕事も踏まえ、家族全員のライフスタイルの変化を許容し、適度な距離感を保ちながら、たくさんの過ごし方を見つけることのできる家が求められた。 敷地のある街は、暗渠が多く、曲がった細路や袋小路が散見される。かつては地主と店子のまとまりによって住宅が群を成していた痕跡が今でも残っていて、袋小路の先には2階建ての木造賃貸アパートが多くみられる。アパートの外階段の立体性が袋小路の抜けと一体となり、密集した住宅街に大きな気積の吹き抜けをもたらしている様がとても印象的に感じられた。 私たちは、3方向接道という敷地の特徴を住み方の不確定さと結びつけるため、玄関の数を増やし、家の中で経路を選べる状態をつくることからスタディをはじめた。敷地4面すべてに玄関を設けたことをきっかけに、動線と部屋の区別がなくなって家の中の気積全体が連続したものになった。周辺環境で印象的に感じた階段のこともあり、様々な場の質が大きな吹き抜けとともに階段にまとわりつくような状況を目指すうちに、以前古書で見かけた、漁村の集落に伝わる「丘端(おかばな)」という地形を思い出した。「丘端」は、もともと「丘の端っこ」が語源らしいのだが、海と山が緩やかにつながる漁村では、視野が開けたり、分かれ道のちょっとした溜まりである「丘端」が、自然と人々の憩いの場になったのだという。丘端の形状やサイズによって憩い方も様々で、その連続体である地形が、人々の生活の多様で具体的なシーンを受け止めている様がとても記憶に残っていた。 そこで、「丘端」を参考に、階段を、場の質を孕む地形のように捉えるとともに、家全体の構造コアとした。階段の足元をRCの高基礎でがっちりと固めた上で、漸増する面を「倒れた壁」とみなすことで在来木造の耐震壁の扱いとし、上りきりがふらつかないように全体のバランスをとりながら、質を持った居場所の集合体となるよう、階段を不規則に変形させている。木造にもかかわらず、構造から自由になった立面は、居場所ごとに異なる快適性を支えるための家具の集合のようになっている。
道の駅 計画案
あいうえおアイウエオ
skip roof
家にかかる屋根を5枚に分けて、家の中にスキップ状に落とし込みながら設置することで、家の中に「断面的な庭」を展開させた。スキップルーフという外部領域は、地上と地下を横断しながら、各階に内部・半外部・外部という場の質をもたらす。そして、内部・半外部・外部を領域的に重ね合わせ、「奥まった外部」や「開放的な内部」、「街に面した半外部」など、様々な環境の濃度が、家の中で混ざり合うような状況を生みだしている。 擁壁を兼ねたRCの地下壁を地上部まで立ち上げ、高い耐震性を持った上部構造を形成する。上部構造の内側は、全て木造在来だが、RC壁に添わせて施工することにより、自由な平面・高さに床を設けることができる。このスキップ状に配置された木部が、屋根や床になっている。
庭基礎の家々
もともと一つであった敷地を文筆し、各敷地に1つずつ家を建てることで近居の2世帯住宅とする計画。 敷地はグリット状の道路と整形の街区による平坦で整然とした風景の住宅街にある。敷地境界状に既製品やブロックの塀をまわし、接道際にわずかな庭や駐車場をもつ建売住宅が多くみられる。 私たちは、2つの家を同時につくるという条件を最大限生かすため、隔てる境界ではなく居場所になる境界、つまり貸し借りできて「お互い様」と居合わせていられる庭先が、内部から外部までグラデーションのような濃淡で連続した2つとも1つとも捉えられる家々を目指すことにした。 そこで、近年の多くの木造住宅が、壁量の多くを外壁でとり、閉じた空間になりがちであるのに対し、かつての民家のような木造住宅は、ふすま・鴨居・建具など、生活と対応した細やかな付属物を巻き込んだ全体のバランスで成立していたことを参照しながら、スケルトンとインフィルが補い合う木構造を考えた。そしてその基礎も、通常のベタ基礎では土台を支える立ち上がりによって内外の縁を切ってしまうと考えたので、幾つもの穴が空いたフラットな土間スラブとし、穴の土に植物を植えたり、ブロックを使った腰高の塀を家具のように家の中へ引き込んで、庭先がそのまま物象化して基礎になったような、「庭基礎」から家を組み立てなおすことで、視線を緩やかに遮りながら、環境と身体の両義的なスケールを巻き込んだ状況を生み出そうと考えた。
Land Watcher
静岡県御殿場市で計画した、1000坪の森を観察しながら育てるための展望台付住宅。 雄大なスケールの森を所有する施主は、この場所に住みながら人間の手を入れ続けることにより、森という環境を伝承していきたいと考えていた。そのような場合、住宅はただ生活の場というだけでなく、森全体を観察しながら育てる「土地観察者=Land watcher」の拠点として、捉え直された。最小限の面積の棟に、回遊性をもったリング状の展望デッキを樹々の間を通すようにまわし、高さの異なる複数のフラフープをまわしている一瞬を切り取ったような構成の建築は、森の全方向に視線を配り、森全体を環境として育てるための場所である。森と人間の多様な補完関係を、建築という物質的な環境をおくことで、習慣や文化として定着させ、持続可能なものに昇華できないかと考えた。
コーポラティブガーデン
東京都品川区東五反田で進行中のコーポラティブハウスの計画。 五反田駅より徒歩4分にも関わらず、桜並木の緑道沿いに位置する計画地は、とても魅力的な外部環境を携えている。コーポラティブハウスという「みんなで建設して集まって住む」という条件を最大限活かしたいと考えたので、10枚の床を10個の敷地を見立て、10通りの家と庭をセットして垂直に重ねるというつくり方を提案した。構造のフレームを工夫することにより、すべての外壁を雑壁として扱うことができるようになり、住む人自身が外壁の位置を自由に決めていく。どの庭も自分たちらしく生活の幅を広げていけるような特徴をもっていて、庭のひとつひとつが共有のEV/階段/大きな吹抜けにより、立体的に繋がっていく。集合住宅の立面を、街並のように奥行きや個性のある対象として考えてみたい。
ヨコハマアパートメント
神奈川県横浜市西区に計画された木造賃貸アパートの計画。 この土地に長く住む施主は、「若い人のための、居住と製作の場として木造賃貸アパートを考えたい」と要望した。 計画地は、谷地という特性上、地面に近いほど暗く、空に近いほど明るいという、明らかにちがう2つの空間性を持っていた。この特性を断面的に活用してはどうかと考え、居住性の良い2階を専有部屋にし、高天井で開放的な1階を半外部空間のまま共有の広場として利用している。広場と街の境界はビニルカーテン1枚だけであり、この物理的な境界の曖昧さにより、建物の一部でありながら、街の一部でもあるような役割を担うようになった。居住者の日常生活をささえながらも、時に小さな公民館のように、街の人にも活用される広場は、たったひとつの建物でありながら、この街を更新していくような広がりをもっている。小さな建築での人のあつまり方、その可能性について考えた。
桃山ハウス
静岡県の温暖な気候に期待し、別荘よりは積極的に利用することが想定される2拠点居住地の計画。 敷地は、大きな山を切り開いたヘアピンカーブの道のちょうどカーブの部分に接しており、道自体にかなりの高低差があるため、道路境界沿いに高さの異なる擁壁が建ち、前の持ち主のものと思われる大きな岩が数十個と豊かな庭木が残置されていた。 なにも建てなくても、既に囲まれていて、豊かな庭もあるような状況だったので、屋根をかければ、建築としては十分であるように思われた。 そこで、屋根のかけ方を工夫した。まず屋根が必要な範囲を考える。一方、屋根を支える柱は、屋根ではなく、下にどれくらいのサイズの場所が必要かという違う条件で配置をする。そうすると、屋根の下だけでなく、時に屋根の外にも柱が出てくるが、梁を持ち出して、そのような柱も構造材としていつも通り利用する。そのようにつくられた空間は、内部と外部、屋根の下と屋根の外という境界があいまいで、あたらしくつくる建築だけでなく、もともとあった塀や庭もすべてひっくるめて建築だと言ってしまうような大らかさをもつ。
村、その地図の描き方
神奈川県で計画した、都内に家をもつ施主のための、2拠点居住用のもうひとつの家。 敷地は、相模湾、富士山、江ノ島を臨む感動的な眺望を備えた650㎡の草原のような場所であり、施主は、ここで、都内ではできないこと、たとえば庭いじりや焚き火、畑仕事などをしたいと要望した。建築物を建てることだけが、その応答ではないと感じられたので、650㎡の敷地全体をまずは使い切るために、建築に何ができるか、という試行に転換した。 100㎡を22戸の個性をもった建築に切り分け、敷地全体にゆるい使い方のゾーニングをかけて、配る。そうすることで、草原全体が建築をヒントに、具体的な居場所の集合となるのではないかと考えた。建築のサイズはいろいろで、中に入れるものだけでなく、中に入れない家具のようなものもある。その前提条件のもと、普段平面図と呼んでいるものを、地図と呼び、施主とのコミュニケーションツールとして利用した。地図は、「使う」という対話から、常に更新されていく。
T社第1倉庫屋上広場
東京都港区の倉庫ビル屋上に工作物を新設し、市民に開放された屋上広場に転換する計画。 屋上というのは不思議な場所で、一建物に属しているのに、それ自体、ランドスケープでもあり、建物単体のスケールを超えて、もっと大きな、周辺環境に属したスケールを備える。T社第1倉庫の屋上は、まさにそうで、一倉庫を超えた、モノレールや高速道路や高層ビル群、運河や海や空といった、まちのスケールに属しており、まちを解釈する視点ともなっている。ロケーションの良さから、単発のイベントや撮影では活用されていたが、継続的に利用されることはなかった。 そこで、屋上を使う、使い続けて習慣をつくる、という創造性について考え、「工作物」に着目した。工作物は、床面積が発生せず、屋内をもたない。この極度に開放された状態を前提としながらも、場所を使うインフラストラクチャーとして工作物を新設する。同一長さで、より広いスケールをダイナミックに扱うため、門型ではなく、3角形のフレームをあつめた構成としている。
ライゾマティクス新オフィス移転計画
東京都渋谷区に移転するクリエイティブ集団『ライゾマティクス』の新オフィスの計画。 『ライゾマティクス』は、WEBや映像制作、ドローンやシステム開発などを業務とするチームであり、20代から30代の個性的なスタッフ約35名が所属している。もともとオフィスとスタジオが離れた場所にあったが、仕事の効率UPや、スタッフ間のコミュニケーションの活性化を目的に、もともとは倉庫だった天井の高い開放的なワンルーム空間に移転する計画を立てていた。 高天井のワンルームという特性を生かして、「さまざまな個性が集まっている状態自体がおもしろい」という状況をめざした。既存のRCラーメンの躯体を利用しつつ、「ビッグテーブル」という中2階をつくり、スタッフの人数の倍以上の席を用意した。回遊しながら、専用席以外での作業も積極的に行う。ひとつの場所をプログラムによって区切っていくのではなく、実際の使い方や集まり方によって、すべての場所が自然と混ざりあったり、重なり合っていくようなオフィスのあり方の提案。
葉山の幼稚園
神奈川県で計画中の、幼稚園の計画。 幼稚園は、特殊な教育機関で、授業数や教育時間などに明確な規定はない。園長の教育方針によって、各幼稚園の教育プログラムは違うのだという。 そこで、幼稚園というプログラムにあわせて空間をつくるのではなく、空間がまず先にあって、そこから学び方や教育プログラムを生み出していく、と状況がつくれないかと考えた。 幼稚園での学ぶ単位、「クラス」に着目し、そのクラスの形に特徴を持たせている。 グルグル走り回ることができそうな8の字のクラス。雨の日に跳び箱ができそうな細長いクラス。先生のお話をみんなで聞きやすそうなUの字のクラス。などなど、1つずつのクラスの形に特徴を持たせ、そのクラスの使い方を考える。そのこと自体が、自主的に学ぶということにつながらないかと提案した。「端によせる」という配置計画により、園庭を確保しながらクラスをばらばらと集合させ、1つの幼稚園とした。
伊勢の農家
三重県伊勢市で農業を営む親世代を手伝うため、里帰りする子世代の家を追加して、既存の農家を2世帯住宅とする計画。 必要となる度、必要な分だけ建てられてきた結果のような建物群には、長い時間の中で、うまく活用しきれなくなり、使われている部分と使われていない部分がある。それは、この建物は使われていて、この建物は使われていない、という単純なことではなく、この建物のこの部分は使っているけど、別のところは使っていない、というような、建物単位とずれた機能不全の集積であった。 子世帯の家として、細切れの使われていない部分を繋ぐため、既存建物と既存建物の間に、新築で建物をつくりながら、その両端の既存改修をしていく、という建物単位ではない更新を考えた。新築部分は、既存よりもはるかに小さく、接続詞のようなものである。接続詞をいれることで、文脈が少しずつ変わり、結果、全体が変わっていくというような更新の仕方、言い換えれば空間の伝承の仕方を提案した。
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